第8回:オーバートレーニング症候群と疲労蓄積のサイン(アスリート休養学 コラム)

〜気づけるかどうかが、すべてを分ける〜
「最近なんだか調子が出ない」「前より走れない」「気持ちも乗らない」・・・
そんなとき、まず疑うべきなのが「疲労の蓄積」です。
アスリートにとって、頑張ること=正義になりやすい環境があります。
しかし、過度な努力が回復を超えてしまうと、逆にパフォーマンスは低下します。
それが「オーバートレーニング症候群」です。
■ オーバートレーニング症候群とは?
明確な医学的疾患ではありませんが、以下のような症状が継続的に現れる状態を指します。
・トレーニングしても成果が出ない/むしろ落ちている
・疲労感が抜けない/朝起きられない
・動悸や息切れが起きやすい
・食欲が落ちる/睡眠の質が悪い
・すぐにイライラする/無気力になる
・ケガを繰り返す
これらの症状が続く場合、「根性不足」や「メンタルの問題」ではなく、体のSOSと捉える必要があります。
■ 原因は「回復の軽視」
・トレーニングの頻度や強度が高すぎる
・休養日がない/睡眠不足が続く
・栄養不足(特にエネルギーと鉄分)
・精神的ストレス(学校・人間関係など)
「疲れが取れない」のではなく、「回復できる時間と環境がない」のが最大の問題です。
■ 対応策:まず“止める”こと
早期対応が最も大切です。以下の対策を取りましょう:
・1〜3日間は完全休養日を設ける
・睡眠時間を優先的に確保(8時間以上)
・エネルギーと鉄分を中心に栄養強化
・強度を落とした「軽めの練習」に切り替える
トレーニングを「続けること」よりも、「長く続けられる体を保つこと」が重要です。
■ 周囲が気づいてあげるべきサイン
選手自身は、状態の悪化に気づけないことが多いため、指導者や保護者が異変に気づくことが必要です。以下の変化に注意しましょう。
・表情が暗い/話しかけにくい雰囲気
・練習中の動きが鈍い/声が出ない
・小さなケガを繰り返す
・練習を極端に嫌がる/無反応になる
こうしたサインは、「練習させれば治る」のではなく、回復を優先する合図として捉えるべきです。
■ まとめ
・オーバートレーニング症候群は「頑張りすぎ」が原因で起こる
・パフォーマンスの低下・感情の乱れ・ケガの頻発がサイン
・回復できる時間・環境・食事・睡眠が足りているかを見直す
・“長く続けるための勇気ある休養”を持つことが大切
【次回予告】
第9回では、チーム全体のリカバリー戦略として、「チームスポーツにおける休養の設計と共有」について解説します。
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