【第10回】「起きてから」では遅い

未来志向のリスクマネジメント
スポーツ現場におけるケガ対応は、これまで「起きたらどうするか?」に焦点が当てられてきました。しかし、これからの時代に求められるのは、「起きる前にどう防ぐか?」という“未来志向のリスクマネジメント”です。
ケガの発生は、偶然ではなく“必然”であることが多く、その背景には必ず複数の原因が潜んでいます。たとえば、フォームの乱れ、疲労の蓄積、睡眠不足、体力不足、心理的ストレスなど…。これらが重なり合い、ある日突然「発症」という形で表面化します。つまり、「原因はずっと前から始まっている」のです。
未来志向のリスクマネジメントとは、この“始まり”のサインをいかに早く察知し、対処するかに尽きます。そのためには、選手自身が自分の身体を理解し、日々の変化に敏感になること。コーチは全体の負荷・スケジュールを戦略的に設計し、トレーナーは定量的なデータや動作分析を通じて、予兆を拾い上げていく。まさにチーム全体で“先を読む力”を磨く必要があります。
また、「ケガをゼロにする」ことは現実的ではないかもしれませんが、「防げるはずのケガを未然に防ぐ」ことは十分に可能です。そのためには、1つひとつの小さな“気づき”や“記録”を重ねることが重要です。RPEや練習日誌、動画によるフォーム記録など、すべてがリスクマネジメントの一環となります。
大切なのは、「その日のパフォーマンス」だけでなく、「半年後・1年後の身体の状態」まで見据えたアプローチをとること。勝利や結果の裏側にある“継続できる体づくり”こそが、真の競技力向上につながります。
“その一歩”が未来を変える。ケガを防ぐということは、選手の「未来を守る」ことと同義です。
Your body can move
身体を変える・未来が変わる
トータルコンディショニングHIGASHI